• “金曜夜8時”レジェンドブームを徹底検証! 語ろう、新春1.8レジェンド・プロレス!!(PART.3/貝山弘一<『燃えろ!新日本プロレス』編集担当>)



    今年1月に旗揚げした『レジェンド・ザ・プロレス リング』。これは、かつて“金曜夜8時”に一大プロレスブームを巻き起こした立役者たちである藤波辰爾、長州力、初代タイガーマスクが中心となって定期開催をしているイベントで、いま、このレジェンドの会場が熱い盛り上がりを見せている。
    そこで今回、12月19日に新創刊となった“世の中とプロレスするひろば”『KAMINOGE』(かみのげ/東邦出版)編集部が、新春1月8日に後楽園ホールにて開催される『LEGEND THE PRO-WRESTLING 2012』に向けて、“上野毛道場伝説”を作った男たちに敬意を表し、“昭和新日本”“金曜夜8時”に熱狂させられた漢(おとこ) 達にインタビューを敢行。それぞれに当時の熱い思いや、1.8後楽園大会の展望などを語ってもらいながらプロレス界において新たなマーケットを開拓したレジェンドを検証していく。
     第1弾の三又又三さん、第2弾のDJ JINさん(ライムスター)に続き、第3弾となる今回は今年10月に創刊してプロレスファンの間でも話題沸騰のDVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』(集英社)の編集を担当する貝山弘一さんです。

    【聞き手:佐藤篤(『KAMINOGE』編集部)】

    ■時代が「生の感覚」に飢えている

    ――『レジェンド・ザ・プロレス』に参戦している藤波辰爾、長州力、初代タイガーマスクの名勝負が収録された『燃えろ!新日本プロレス』がプロレスファンの間で大きな話題を呼んでおります。反響はいかがでしょうか?

    貝山 おかげさまで売り上げも含めまして反響はすごくいいです。読者から送られてくる愛読者アンケートのハガキも現段階で700通も届いているんですよ。そのほとんどが、ボクらもうれしくなるような、「ありがとうございます!」「待ってました!」といった内容なんですね。

    ――まさしく賞賛の嵐ですね。

    貝山 読者の声が示すとおり、満を持してのタイミングだったんでしょうね。やはり70、80年代というのはビデオデッキが出てくるかこないかの時代で、今ならYouTubeでも当時の映像は観られるんですけど、あの時代の「生の感覚」に飢えていたというのはドンピシャであったと思うんですよ。

    ――確かにおっしゃるとおりで、「生の感覚」に飢えてました(笑)。

    貝山 ここ数年の昭和ブームみたいなものもあって、「あの時代をもう一度」というような、昭和の熱気であったり活力に飢えていたという雰囲気が今の世の中にあると思うんですよ。なので、『燃えろ!新日本プロレス』で当時の試合を見直して、「なんでこんなにパワフルで、エネルギッシュに満ち溢れていたんだろう」と、改めて実感できるのではないでしょうか。

    ――『レジェンド・ザ・プロレス』にとっても、今回の『燃えろ!新日本プロレス』の創刊はいいアシストになってると言いますか、現に本のなかで登場している藤波辰爾、長州力、初代タイガーマスクが今も現役でリングに上がり続けている、そこに驚かれている方も多いと思います。

    貝山 先日、この分冊百科の定期購読特典・DVDの収録で藤波、長州、初代タイガーの御三方に集まっていただいて当時を振り返ってもらったりしたんですけど、みなさん若いですよね。アンチエイジングとか言われてますけど、まさに御三方はそれを地で行ってるというか、特に長州さんは今もなお脂が乗り切ってるような感じでしたよ。肌つやが物凄くいいじゃないですか(笑)。

    ――長州さんは、全盛期を彷彿とさせるグッドコンディションですね(笑)。

    貝山 レジェンドの方たちもおっしゃってましたけど、「今まさに時代が自分たちを必要としている」という雰囲気を感じ取ってるんですよね。今こうしてレジェンドの試合を観る、プロレスにまた戻ってきた人たちというのは、強いキャラクターを求めていたり、ドラマを求めていると思うんですよ。『キン肉マン』『仮面ライダー』『ウルトラマン』など当時のアニメやマンガは、強いキャラクターがいて、今も色あせていないじゃないですか。しかも、時代がめぐって、そういったキャラクターがまた世に出てきますよね。それが、レジェンドの方たちが「歳を取らない」というのにも繋がってくると思うんですよ。それこそ、「この人たち、マンガのキャラクターか?」と思ってしまうくらいで(笑)。

    ――確かにレジェンドの方たちは時代を経ても未だに色あせてないですね。

    貝山 さらに、いい意味でアクが強いじゃないですか。そのアクの強さが、「クールジャパン」と言われている世の中に「クールじゃねえだろ!」と投げかけているような、言い方は悪いですけど「暑苦しい人たち」にはやっぱり敵いませんよね(笑)。

    ――レジェンドの会場もまさにその「暑苦しさ」がいい意味で充満しているというか、熱気にあふれています。

    貝山 当時もそうだったんですが、80年代の新日本プロレスというのは「何が起こるかわからない」というような、ハプニングとアクシデントの連続を期待して会場へ観に行くようなところがあったじゃないですか。会場にいても自分たちが乱闘や暴動に巻き込まれるんじゃないかっていう、そういう身の危険を感じる臨場感もありましたし。だから、さっきも言った「生の感覚」ですよね。そこを『燃えろ!新日本プロレス』の制作においても大事にしているので、読者の方々からも多くの共感を呼んでいると思うんですよ。だから、レジェンドを観に来るファンも一緒なんじゃないでしょうか。同じ現場にいるという共有感であったり、そこで得られる興奮を欲しているんじゃないかと。


    ■子供のころ、ボクは長州さんのことが嫌いでした(笑)

    ――貝山さんご自身がプロレスを観始めたのはいつぐらいからでしょうか?

    貝山 小学生くらいからですね。ボクは別にコアなファンだったわけじゃなくて、その当時、金曜20時、土曜20時にテレビでプロレスを観るというのは当たり前のことでしたから。それこそ、テレビをつけたらプロ野球か、プロレスか、ドリフかっていう話で(笑)。

    ――当時の子どもたちにとっての三種の神器ですよね(笑)。

    貝山 意識して観るとかっていうよりも、日常のなかにプロレスがありましたからね。学校の休み時間に仮面ライダーごっこをやったり、友達同士でプロレス技をかけ合ったりするのは普通でしたよ。必ずコブラツイストをかけるのは当たり前みたいな(笑)。だから、プロレスを観るっていうのは特別なことじゃないんですよ。

    ――その当時を振り返って、今も思い出に残っているものはありますか?

    貝山 アントニオ猪木のハルク・ホーガン戦での舌出し失神事件なんかは、「こんなのありかよ!」って誰しもが思った出来事でしたね(笑)。TVドラマでもできないような驚きの連続でしたし。改めて当時の試合映像を見直して思ったんですけど、勧善懲悪で収まるような『水戸黄門』のような面白さがあったり、そうかと思えば想像もつかないような裏切りがあったり、よくできてますよね。今だってこんなシナリオを作ろうと思っても、なかなかできないと思いますよ。

    ――幼心には過激すぎるドラマの連続ですよね(笑)。

    貝山 あとは、ありえない出来事に当事者として参加しているような感覚がありましたよね。目の前にあるテレビ画面と自分との間に境目がないというか、同じ空気を共有している感じがあったと思うんですよ。

    ――よく言われる共犯関係に近い感覚ですよね。その過激すぎる連続ドラマのなかで藤波、長州、初代タイガーというレジェンドたちは当時のファンを熱狂させてきたわけですが、まず藤波さんについての印象はいかがですか?

    貝山 ボクの印象だと、藤波さんは、野球で例えるなら「長嶋茂雄における原辰徳」かなと。猪木のあとにスーパーヒーローを求められているなかで、藤波さんはビジュアルもかっこ良くて実力もあったんだけど、猪木をなかなか超えられない悲哀みたいなのがあったじゃないですか。

    ――後継者として期待されたゆえの悲哀ですよね。

    貝山 だけど、そうして藤波さんが背負い続けてきたものに対して共感する人も多くいたと思うんですよ。それでいて、長州さんの「かませ犬発言」もそうですけど、自分以上に相手を光らせるという部分において藤波さんは長けてましたからね。それは藤波さんが持っている「真面目さ」というのもあったのでしょうけど。

    ――なるほど。それでは長州さんはいかがでしょうか?

    貝山 子どものころに新日本を観ていて、ハッキリ言ってボクは長州さんのことが嫌いでしたよ(笑)。

    ――嫌いでしたか(笑)。

    貝山 やっぱり藤波さんと違って、長州さんは猪木さんの後を追わなかった。そして、革命戦士として、いわゆる憎まれ役のポジションだったじゃないですか。だって、身内から反逆児が出てくるわけですよ。幼心に「猪木、藤波に何しやがるんだ!」っていうのはありましたよ(笑)。

    ――悪役レスラーとはまた違った形での憎まれ方でしたよね。

    貝山 長州さんは、「正統派ヒーローだけじゃ物足りない」っていう時代が生み出したレスラーだと思うんですよ。それまでの悪役レスラーというのは、結局は猪木さんに最後はやっつけられたじゃないですか。それこそ汚いことをしなければ猪木さんには勝てなかったわけで。だけど、長州さんは正攻法で勝ってしまうからなおさら受け入れがたいというのがあってですね。言い訳を許さない勝ち方をするじゃないですか(笑)。

    ――有無を言わせない強さがありましたよね。

    貝山 アンチヒーローというか、ヒールが正攻法で勝ってしまうからファンも認めざるを得なかったんでしょうね。そして、そういう長州さんの姿にファンもひかれたんだと思いますよ。

    ――なるほど。それでは初代タイガーはいかがでしょうか?

    貝山 当時、ボクは高校生だったんですけど、子どもらがタイガーに熱中する一方で、ボクらなんかは「タイガーマスク? ギャグかよ」って感じでわりと冷めていたというか、色眼鏡で観ていたところはありましたよね。それが、実際に出てきて、空中殺法とか今まで観たこともないような技を繰り出すじゃないですか。サッカーで例えるなら、80年代に今のバルセロナのサッカーが急に飛び込んできたような感じですよね(笑)。

    ――次元が違いすぎるぞ、と(笑)。

    貝山 バルセロナのスピード、連携がその当時にいきなり現われたら、みんな目が点になるはずじゃないですか。それと同じくらい初代タイガーというのは時代を先取りしていたと思うんですよ。しかも、タイガーのほうが100パーセントじゃなくて、80パーセントくらいで周りにあわせていたんじゃないかって、余裕がありすぎてMAXを出してない感じなんですよね。だから、『燃えろ!新日本プロレス』vol.5に収録されているんですけど、エル・カネック戦なんかは相手もヘビー級だけあって、タイガーがやりにくそうにしているというか、素の部分が垣間見えていいんですよね。なので、いろいろあるタイガーの試合のなかで、カネック戦をあえて入れたというのもあるんですけど(笑)。


    ■レジェンドたちにとって、今がまさに見せ所では?

    ――ここからは『レジェンド・ザ・プロレス』の1・8後楽園大会についてうかがっていきたいのですが、スバリ貝山さんが注目する試合は?

    貝山 今回だと長州力vs橋本大地ですね。いわゆる時代の狭間において、長州さんも言ってたんですけど「まだまだ自分たちは何かを伝えていかなければいけない」と。そういう部分で燃え尽きるまで、やり尽くさないと気が済まない、そういう男たちが魂を継ぐ者に伝承していく、それが大地戦だと思うんですよ。長州さんをはじめ、藤波さん、タイガーさんは「伝承」という部分で燃えてますからね。

    ――そういう意味でも絶好のタイミングだと。

    貝山 まさに「時は来た!」ですよ(笑)。ミュージシャンなんかもそうなんですけど、井上陽水やユーミンが未だにパワフルなのに対して、若い世代のアーティストなんかはそれをまざまざと見せつけられて、敵わない、触発されるしかない、みたいなところがあるんですけど、それと同じですよね。逆に、レジェンドと呼ばれている人たちにとっては、今がまさに見せ所じゃないですか。そして、若い世代にとってはそれを生で体感できる絶好のタイミングでもありますし。

    ――なるほど。

    貝山 でも、こういうことを言いながら思うんですけど、未だにレジェンドたちのほうが目立っちゃうというか、ボクらもレジェンドのほうにドラマを求めてしまうし、今の若い世代に物足りなさを感じてしまうわけじゃないですか。だけど、その一方でレジェンドの人たちは「早く俺たちを乗り越えろよ」という想いで大きな壁となってくれているわけですから、それを越えないでどうするっていう若い世代に対しての想いもありますよね。『キン肉マンII世』の万太郎の最初なんかもそうだったんですけど、オヤジたちはヘロヘロのヨレヨレで闘えなくなった今、お前たちが外敵と闘わないでどうするんだ、というところで独り立ちしていくわけですから。

    ――若いから、息子だからで通用するのは今のうちだと。

    貝山 だから、大地選手も今まさに独り立ちしていかなければいけないということを肝に銘じて闘って欲しいですよね。この核家族時代のなか、すでに親父さんはいなくなってしまっている状況で、いわゆる周りの親戚の叔父さんたちがみんな出てきて、「お前の親父はすごかったんだぞ!」っていうのを大地選手に教えてくれてるわけじゃないですか(笑)。

    ――そう考えると、素晴らしい光景ですよね(笑)。

    貝山 いやあ、本当に素晴らしいですよ。だから、大地選手にまず目指してもらいたいのは、「オヤジ越え」ですね。


    ●貝山弘一プロフィール
    株式会社集英社 第5編集部 出版企画室 副室長
    今年10月に創刊したDVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』の編集担当を務める。
    『燃えろ!新日本プロレス』(隔週木曜日発売)の最新号vol.6「新日マット来襲、THE最強外国人」はただいま好評発売中!


    ■LEGEND THE PRO-WRESTLING 2012
    2012年1月8日(日)東京・後楽園ホール 開場11:15 開始12:00

    【対戦決定カード】

    <メインイベント 第6試合 タッグマッチ 60分1本勝負>
    藤波辰爾、長井満也 vs 藤原喜明、石川雄規

    <セミファイナル 第5試合 シングルマッチ 60分1本勝負>
    長州 力 vs 橋本大地

    <第4試合 シングルマッチ 45分1本勝負>
    初代タイガーマスク vs エル・サムライ

    <第3試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
    田中将斗、石井智宏 vs 本間朋晃、アレクサンダー大塚

    <第2試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
    ヒロ斉藤、ベアー福田、倉島信行 vs スーパー・タイガー、タイガー・シャーク、間下隼人

    <第1試合 新春!お年玉マッチ 30分1本勝負>
    菊タロー vs えべっさん

    お問い合わせ:LEGEND THE PRO-WRESTLING実行委員会  03-5951-1488

    “世の中とプロレスするひろば”
    『KAMINOGE』(かみのげ)創刊!!
    東邦出版より絶賛発売中!(定価/税込1000円)

    [巻頭スペシャルインタビュー]
    2011年の甲本ヒロト
    「僕が一番怖いのは、バチが当たること。幸せすぎる人に与えるバチというものがあるとし たら、それだけは当てないでほしいの。幸せのまんま放っといてほしい」

    桜庭和志
    「問題の“カブラル”戦、そして今後について語る」

    LEGEND対談 “上野毛道場をまたいだ男達”
    藤波辰爾×長州力×初代タイガーマスク
    「来年は下関市役所の職員全員が、タイガーマスクをかぶって仕事するから」(長州)

    ほか、所英男と語る 『元気ですか!! 大晦日!! 2011』 座談会、快楽亭ブラックが語る「立川談志」、ザ・ グレート・サスケ「岩手県議選に再出馬も落 選!」、マッスル坂井・坂井良夫「新潟在住・坂井 親子が育児を語る」、吉田豪が角川春樹氏の娘に迫る、田村潔司×山口日昇など、盛りだくさんの内容です!